LIBERTEーー君に

「わかっている、わかっているけれど……」

「つべこべ言ってないで。うちの大学からもエリザベートに出場する学生がいるんだぞ」

詩月には郁子以外の学生は全く眼中にはなかったが、ミヒャエルに言われてハッとした。

詩月は同じ教授に師事している学生の顔すらも録に記憶していなかったし、どんな演奏をするのかさえ興味がなかった。

「お前、自分が『ヴァイオリン王子』以外にどう呼ばれているか知ってる? 『チルチルミチル』詩月は居もしない青い鳥を探していると言われているんだぜ」

「意味がわからないな。青い鳥の童話は知っているけれど」

「才能があって、父親が有名な演奏家で、練習する環境も整っていて、周りに大勢の競う相手もいて……なのに詩月は何も見ていない。いったい何処を見ているんだとね」

「僕の目標は、父を周桜宗月を越えることだ。居もしない青い鳥を追っているわけではない」