LIBERTEーー君に

ビアンカがミヒャエルの背中をつつき、話しかけた。

「なんだか、詩月がミヒャエルにコンクール勧めた時の演奏、思い出すよ」

ミヒャエルは黙ったまま、詩月と貢の演奏を聴いていた。

「貢のヴァイオリンはミヒャエルよりずっと大人しくて、熱いな~とか、激しいな~とかではないんだけど、迫ってくるモノがあるよね。この曲、ブラームスの」

「雨の歌だ」

ミヒャエルは詩月と貢を見つめたまま、ポツリと呟いた。

貢の雨と詩月の雨がぶつかり合っている、けしかけているのは詩月だーーでも、違和感がない。

「ピアノが……詩月のピアノ、こんなに情熱的だった?」

そうだ、俺の時とは違う。

ピアノがベーゼンドルファーに代わったからではない。

ミヒャエルは身を乗り出していた。

貢の雨は詩月の雨とぶつかり合いながら、しだいしだいに激しくなっていった。

雨音が強くなる。