LIBERTEーー君に

気持ちを抑えようと数回、深呼吸した。

「ケルントナー通りで周桜と散々、ブラームスを演奏しておいて、コンクールではブラームスを演奏しないんだな」

「ああ、それは詩月の策だ」

「正直にブラームスを弾くと思っていたんですか」

「周桜? いや、あれだけ繰り返しブラームスを演奏していれば、ブラームスを弾くと思うだろ。普通」

「安坂さんは見抜いていると思っていましたけど、存外純粋なんですね」

貢はクソッと思ったが、口には出さず代わりに訊ねた。

「でも、何故そんな。回りくどいことを?」

「ブラームスを冠にしたコンクールで、全ての審査ステージの選択課題曲にブラームスの協奏曲が含まれている場合、審査員もコンテスタントもブラームスを選択するのは常識だし、有利。そう思うのが自然ですよね」

「まあ、そうだな」

貢は自分もそう考えて、ブラームスを課題曲にした。