貢の頭の中を昼間、詩月に言われた指摘がグルグルと回っていた。

貢は楽譜を元通りに置いて、演奏室を出た。

部屋に戻り、楽譜を広げた。

ーー何と薄っぺらい解釈だろう。

貢は自分の楽譜を見つめ、詩月の楽譜を思い浮かべた。

ーーあれほどの思い入れを持って譜読みをしたことはなかったし、伴奏をするために、あれほどまで真摯に譜読みをしていたのか。
周桜は俺の課題曲だけでなく、ミヒャエルの課題曲にも同じように、譜読みをしているに違いない。
どれほど、今日の演奏にガッカリしたことか

貢はそう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「何て奴だ、あんな奴に敵うわけないじゃないか」

楽譜を見つめなから、思いが零れた。

ーー周桜の楽譜など見なければよかったーー気づかなければよかった、周桜と自分との実力の差に

貢は悔しさで胸の奥がジリジリと焼けるように熱くなっていくのを感じた。