LIBERTEーー君に

「初めてで緊張していると答えたけれど。実際、安坂さんの演奏はもっと、ヴァイオリンを歌わせた方がいいし、聴き手を意識した方がいい」

「そう、お客さまは正直ね。詩月、何とかならないかしら」

マルグリットが上目遣いで、詩月を見つめている。

「つまり、それは何とかしろと云うこと?」

「ええ。できるでしょ」

「わかった」

「お願いね」

詩月はマルグリットの声を背中越しに聞き「お願い」と言われてもーーと、頭の中で策を巡らした。

詩月がカウンター奥の部屋から出ると、貢のヴァイオリン協奏曲が、あと数十秒で終わるタイミングだった。

詩月は貢が演奏を終え、ヴァイオリンを下ろすと同時に、ピアノをポンと鳴らした。

詩月は振り返った貢に、小声で訊ねた。

「ファイナルのチャイコンは入っていますか」

「ああ」