LIBERTEーー君に

貢と詩月の演奏は、雨音に色彩はないのに、色彩に満ちている。

曇り空から降る無数の雨、木々の緑に降り注ぐ雨、土を潤す雨、傘を伝い落ちる雨雫。

土砂降りの重い雨ではなく、優しい雨だ。

繊細なヴァイオリンの音色に寄り添うピアノの音色は包みこむように暖かい。

あまりにも優しい演奏に、感極まり涙腺が緩み、涙が溢れ出すほど、哀愁に満ちている。

貢はブラームスがこんなに優しく哀しいと感じたことはなかった。

ーー周桜のピアノが自分のヴァイオリン演奏に、色をつけた

貢は詩月がこれほどまで、曲を仕上げているとは思ってもみなかった。

貢が詩月に課題曲のリストを伝えて、まだ1週間経っていない。

貢と詩月が課題曲を合わせるのは、初めてだ。

貢は教授が紹介したピアニストでは、いくら練習を重ねても、これほどの演奏にはならないと思った。