私はエルを好きだと自覚してからずっと、頭の中がエルの事でいっぱいになっていた。

 子供達の世話をしている時のふとした瞬間とか、刺繍している間もだ。だからいっその事、そのエネルギーを全て刺繍に集中させてみようと、ひと針ひと針、エルへの思いを込めて刺してみたのだ。

 ……正直、自分でもヤバイやつだと思うけれど。


「有難うございます……! とても、嬉しいです……!」


 ──なのにそんな事を知らないエルは、この呪いのような刺繍が施されたハンカチを、とても嬉しそうな笑顔で受け取って──


 エルがハンカチに触れた途端、「パキィィィン!!」という音と共に、部屋中に光が迸った。


「──な……っ!!!」


 エルの驚くような気配がしたのと同時に、私の意識は闇に飲み込まれて行き──次に目覚めたのは、日が昇り始める早朝だった。


「あれ? あれれ?? どうなってるの!? エルは──!?」


 私はいつの間にかベッドに寝ていたようで、部屋を見渡してみてもいつもと同じ光景が広がっているだけで、エルの姿は勿論無い。


「んんー? 昨日エルと会っていたのは夢……?」