エルはそう言うと、そっと身体を私から離す。そうしてエルとの間に出来た距離を少し寂しく感じるのは……やっぱり私がエルを好きだからだろう。


「何だかお疲れのようですね。今日はもう眠られては如何ですか?」


「うん? そうなのかな? じゃあ今日は早く寝ようかな」


 自分では疲れているなんて思わなかったけれど、自覚していないだけかも知れないので、エルの言う通り今日は大人しく寝る事にする。


「それが良いですよ。では、僕はこれで失礼しますね」


「……あ、ちょっと待って」


 いつものように窓から出て行こうとするエルを引き止め、私はエルに贈るために用意したハンカチを取り出した。


「これ、エルにお礼を、と思って用意したんだ」


 ランベルト商会へ卸す品に刺繍をしている時に、ふとエルにお礼がしたいと思いついた。私が刺繍した物をエルに贈りたくなったのだ。


「エルの名前を刺繍してみたんだ。使うかどうかは分からないけれど、もし良かったら受けっとてくれたら嬉しいなって……」