「……貴女は、この国の事を何処までご存知ですか……?」
エルの質問に、一瞬何の事か分からなかったけれど、ぼんやりした頭のまま答える。
「……この国……? 地理ならある程度……」
「では、王室の事は?」
「それは全然……王太子が若そうな事ぐらい……?」
「……王室とアルムストレイム教の関わりについて、司祭から何かお聞きしていますか?」
「アルムストレイム教は『聖水』を国との交渉材料にしてるって……聖属性のものを用意できるのは法国だけだから、どの国も言いなりだってお爺ちゃんが……」
「……そう、ですか……分かりました。質問に答えていただき有難うございます」
エルは私にそう言うと、再び私をギュッと抱きしめた。その後、私のおでこに柔らかい感触が降りて来たかと思うと、突然私の頭がクリアになる。まるで濃い霧に覆われていた視界が晴れたかのようだ。
「……あれ?」
沈みかけていた意識が急に引っ張り上げられたかのような変化に戸惑って、エルからの質問やおでこにあった感触なんかが全部吹っ飛んでしまう。
「貴女が僕を信じてくれてとても嬉しいです。嬉しさのあまり突然抱きしめてしまって申し訳ありません」



