何とかそれらしい言葉を並べてみるけれど、自分の言葉じゃないような気がして──私は更に言葉を続ける事にする。
「まあ、そういう理由もあるけれど、本当は私がエルを……私達を救ってくれたエルを信じてるから、かな。たとえエルが悪魔だとしても、何者だとしても私はエルを──……」
──信じているから。と、エルに伝えようとしたけれど、その続きは言えないまま掻き消される。何故ならエルに強く抱きしめられた驚きで言葉が出なかったからだ。
「……っ、すみません、こんな事は失礼だと分かっています……でも、しばらくこのままでいさせてくれませんか……?」
男の人に抱き締められた事がない私の心の中は混乱を極めていたけれど、エルの腰にくるような美声に心地いい体温、甘い香りに包まれると、まるで魅了されたかのように脳が痺れ、思考が揺さぶられる。
(うわ……何だろう、これ……頭がクラクラする……!)
好きな人に抱きしめられるのがこんなに心地良いなんて。今までそんな事知らなかった。



