「またテオとひと悶着あったそうですね」
子供達が寝静まった夜、エルが私の部屋にやって来て放った第一声がそれだった。
エルは一体どうやって情報を仕入れているのか……謎だ。でも今回は市場の真ん中で起こった事だから、街中に噂が広まってしまったかもしれない。
今度街に行った時皆んなにからかわれるんだろうな……うぅ。
「まあ、そんな事もあったけど市場の人達が助けてくれたから大丈夫だったよ」
エルを安心させるつもりで言ったけれど、エルは私の返事に不満そうな顔をする。
「貴女は以前僕が言った言葉を覚えていますか? もっと男に対して警戒して下さいとお願いしましたよね?」
「……え、でも誘いには乗らなかったし……大丈夫だったし……」
真剣なエルの顔がすごい迫力で、未だに美形に慣れない私は少し怯んでしまい、一応反論するものの、声は段々小さくなってしまう。
「貴女が無事だったのは結果論に過ぎません。テオに会った瞬間逃げるぐらい警戒して下さらないと」
「え……! そこまで警戒しないといけないの?」