もちろん、その一部というのはテオの事だ。昔から何かと絡まれるけれど、最近その頻度が高くなってきている感は拭えない。
そう言えば領主の息子って勉強しないのかな? いつもフラフラしているみたいだけど。
「もう! サラちゃんは不用心ね! サラちゃんはとても可愛いのだからもっと自覚して! 自分を大切にしてちょうだい!」
「はい、気を付けます」
クラリッサさんの迫力に思わずこくこくと頷いて返事する。最近同じ様な事をエルにも言われたっけ。
「サラちゃんはこの街の大切な宝なんだから、本当に気をつけなさい? 皆んないつもサラちゃんを心配しているのよ」
「え……。いや、宝って……そんな大袈裟な」
この街唯一の神殿の、唯一の巫女だからかな? まだ見習いだけど。でもそんな風に思ってくれている事がとても嬉しくて、私の心がじんわりと温かくなる。
「……でも、すごく嬉しい! 有難うクラリッサさん」
私には親がいないから想像でしか無いけれど、もしお母さんがいたらこんな風に心配してくれたのかな……なんて思いながら笑顔でお礼を言うと、涙目のクラリッサさんにぎゅうっと抱きしめられた。



