「親父! 孤児院への資金提供はちゃんと止めているんだろうな!?」
テオバルトが本の山に向かって声を上げるが、返事は聞こえない。
「サラの奴、未だに俺に援助を求めて来ないんだぜ!? もう孤児院には金が残っていないはずだろう!? どうなってんだよ!」
セレドニオからの返事が無くても構わずに、テオバルトは声を上げ続ける。そうしてしばらくすると、読書の邪魔をされた事に腹を立てたのだろう、機嫌が悪そうなセレドニオの声が聞こえてきた。
「……全く、うるさい奴だ。儂が書斎にいる間は何人たりとも近づくな、と執事に伝えておいたはずだが?」
「その事は聞いたから知ってるけどよ! 今はそんな事より孤児院の件だよ! なあ、ちゃんと資金は渡していないんだよな? 神殿からの支援金も渡していないよな?」
テオバルトの切羽詰まった様子に、セレドニオはやれやれとため息をついた。
「司祭が不在となってからは孤児院に資金は渡しておらんよ。もうかれこれ一年経とうとしているのだ。既に経営が破綻しておってもおかしくないのではないか?」



