ナターリエさんは刺繍したハンカチを一枚一枚見て、時々裏返しては不備が無いか確認している。こういう時のナターリエさんは怖いぐらいに真剣な表情で、空気もピリピリしているから、この査定時間は緊張しっぱなしで倒れそうになる。
……倒れたこと無いけど。
私が今回刺繍をして持ってきたのはハンカチにポーチ、クッションカバーなどだ。
ナターリエさんはこれら全てをチェックすると、とても満足そうに微笑んだ。さっきまでの緊迫した空気がふわっと霧散する。
「相変わらず素敵な刺繍ね。サラが刺繍すると既製品でも価値が上がるようだわ」
どうやら今回持ってきた品物は好評のようだ。あー良かった!
「ありがとうございます! では、今回の品は……」
「ええ、合格よ。全て買い取らせていただくわ」
「やったー! ……あ、すみません!」
ナターリエさんから合格を貰えた嬉しさで思わず声に出してしまい、慌てて謝罪する。ナターリエさんの前だけでも淑女っぽく振る舞いたいと思っていたのに……!
そんな私の様子に、ナターリエさんはクスッと笑うと、私が刺した刺繍を褒めてくれる。



