「いや、司祭の位を返上しに行ったっきり音信不通でさ。お爺ちゃんは帰ってくるって言ってたのにおかしいなーって。だからもしかして何かあったんじゃないかなって。ただ、怪我とか死んだなら連絡があるはずだけど、今のところそれも無いから生きているとは思うんだよね」


 エルはお爺ちゃんが私達を見捨ててのうのうと隠居していると思ったのだろう。悪魔なのに私達の心配をしてくれるなんて、お人好しなんじゃないだろうか。


「……やはり神殿本部か……」


 慌てた私のフォローにエルの怒りは治まったようだけれど、今度は何かを考え込んでしまう。

 でも敬語が抜けたその呟きに、自分の前では素を見せてくれているのかも、と思うとちょっと嬉しい。


(何が目的なのかは分からないけれど、何だか忙しそうだよね……)


 悪魔にも睡眠が必要かどうか分からないけれど、ちゃんと寝ているのか心配になってしまう。……巫女見習いが悪魔の心配だなんておかしいのだろうけれど。


 ──でも、せめてこの部屋にいる間だけは……少しでも心が安らいでくれたらいいな、なんて……私はそう思わずにはいられなかった。