「若くて綺麗で歳を取らないなんて、まるでエルフみたいだよね。でも法国は純血主義がまだまだ根強いし。<使徒座>の中でも亜人嫌いが数人いるらしいから、教皇がエルフだなんて有り得ないんだけどさ」


「……え!? いや、ちょっと待って下さい! 貴女は<使徒座>の事もご存知なんですか?」


 私の話を静かに聞いていたエルが、突然声を上げたから驚いた。


「うえっ!? ま、まあ、司祭様から聞いた範囲なら……?」


「貴女を育てたという司祭様とは一体何者なんですか? 教皇の姿を見た事があり、更に法国の中央行政機関である各聖省の長の事までご存知だなんて……ただの司祭では無いのでは?」


 エルに真剣な顔でそう言われ、改めて司祭様──お爺ちゃんの事を思い出す。


「……何ていうか、自由な人だったなあ。聖職者なのに、その枠に縛られない感じと言うか。破天荒な性格をしていたしね。今は神殿本部にある引退司祭様用の施設で隠居してるんじゃないかなあ」


「隠居……? 貴女や子供達を置いて、ですか?」


 いつもは甘い声色だったエルの声が、一段も二段も冷たく低くなる。心なしか部屋の気温が数度下がったような気もする。