巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。


 私がちゃんと返事したのを確認したエルが、私を捕らえていた腕を下ろしてそっと身体を離す。すると、エルの温もりも香りも一緒に離れてしまって少し寂しく感じてしまう。


(……何だろう、この感じ。もしかしてこれが人肌が恋しいというものなのかな?)


 エルは人じゃなくて悪魔だけれど、人間と同じように体温があるみたいだし。


「どうかしましたか?」


 悪魔でも温かいのかと不思議に思って、ついついエルの身体をジロジロ見てしまった私に、エルが怪訝そうにその柳眉をひそめる。


「ごめんごめん。いや、エルの体温が心地よくてさ。人肌も良いもんだなーって」


 私がそう言うと、エルは片手で顔を覆って天を仰ぐ。そして何か呟いていたけれど、声が小さすぎて全く聞こえない。


(それにしても悪魔が天を仰ぐ姿というのもこれまた珍しいのでは? 今日は色んな発見をする日だなぁ)


 私がエルの珍しい姿を眺めながらそんな事を考えていると、ようやくエルが再起動した。


「……本当に貴女という人は……! 天然ですか!? そういう事は他の男に言ったら駄目ですよ! 絶対ですよ!」


「お、おおぅ、気をつけます……?」

 何故かまたエルに怒られてしまった……うーん、悪魔の考えはよくわかんないや。