「よう、サラ。この前王都に行ったんだって? 水臭いなあ。言ってくれたら一緒に行ってやったのによぉ」
この馴れ馴れしいやつはテオバルトと言う、この街の領主のドラ息子だ。昔っから事あるごとに私に絡んでくる嫌な奴だ。しかもナルシストだからたちが悪い。自分に靡かない女はいないと本気で思い込んでいるのだ。
「……何か用? これから晩御飯の準備で忙しいんだけど」
「用がなければ会いに来ちゃいけないのかよ。俺がわざわざ会いに来てやってんだから、もっと嬉しそうな顔しろよ。せっかく可愛い顔してんだからさぁ」
正直テオのことには全く興味がないので、会いに来られても迷惑以外の何物でもない。コイツは自分の自慢話しかしないし、相手をするだけ時間が勿体ないのだ。
(テオの相手している時間で刺繍や本を読んで勉強ができるのに……)
「なぁ、そろそろ俺と付き合う気になったか? 孤児院の経営厳しいんだろ? 俺と付き合えば親父に頼んで援助してやれるぜ?」



