巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。


(……あ、ちょっとだけお金を残して、子供達におやつを買ってあげたいな)


 そんな事を考えて、子供達が喜ぶ顔を想像すると思わず顔がにやけてしまう。本当は今度貰えるお金は子供達の服を買うための貯金に回そうと思っていたのだ。


(エルが服を贈ってくれて本当に助かったよ。その分内職の資材を買えるから、刺繍をいっぱい頑張れるし)


 色鮮やかな刺繍糸は高価だから、今迄は地味……落ち着いた色合いのモチーフしか刺繍出来なかったけれど、これからはもっと華やかな図案を考えることが出来ると思うと楽しみで仕方がない。


 こんな風に心に余裕ができたのもエルのお陰だと考えると、悪魔だと分かっていても感謝してしまう。


(次は何時逢えるかな? 今晩来てくれるかな? エルにも何か刺繍したら喜んでくれるかな)


 気がつけばエルの事ばかり考えている自分に気がついた。エルと会えるのを楽しみにしている事に驚いてしまう。そればかりか贈り物だなんて……。


(いやいやいや! ちょっと感謝の気持ちに渡すだけだから! そんな意味深なものじゃ無いから!)