巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。


 アルムストレイム教に於いて「エル」とは「光り輝くもの」という意味だ。悪魔なのにそのネーミングってどうかと思うけど……。まあ、悪魔が人間に<真名>なんて教えるわけないものね。

 悪魔の<真名>を知れば魂を縛り、自分に従属させることが出来ると言われている。だから悪魔は<真名>を決して知られないように隠蔽するという。


「……わかった。じゃあ、これからはエルと呼ばせてもらうね。あ、私の名前は──」


「『サラ』というのでしょう? とても可愛い名前ですね。僕もそうお呼びしても?」


 心地よい、甘い声で名を呼ばれて思わずときめいてしまう。流石悪魔! 聖職者と敵対する存在なのに、感心せずにいられない。敵ながらあっぱれと言うべきか。


「うん、いいよ。これからよろしくね、エル」


「ええ、こちらこそよろしくお願いしますね、サラ」


 お互いに挨拶を交わした後、エルは「では、僕はこれで」と言って窓から帰ってしまった。


(え!? ちょ、窓からって!!)


 慌てて窓へ駆け寄ると、「ゴォオオ!!」とものすごい風が吹き、窓ガラスが「ガタガタッ」と音を立てる。