街の様子や領主の噂を知りたいなんて、人間の世界のことを学びたいのだろうか。でもきっと本命はアルムストレイム教についての情報じゃないかと推測する。
私の言葉に、悪魔は壮絶に美しく、でも悪巧みしているような、そんな笑みを浮かべて頷いた。
「理解が早くて助かります。毎日は無理ですが、出来るだけこちらにお邪魔させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたしますね」
「うん、わかった。そう言えば貴方のことをなんて呼べばいいの? 悪魔って呼ばれるのは嫌なんでしょう?」
もし私が「悪魔」って呼んでいる所を誰かに聞かれたら、そこから神殿本部にバレてしまう可能性がある。出来ればそれは避けたいと思う。
悪魔は私の質問に「そうですねぇ」と言って考え込んでいる。
「では、僕のことは『エル』とお呼び下さい」
「え……『エル』……?」
「はい」
悪魔……じゃない、エルはにっこり微笑んだ。悪魔のくせに花咲くような笑顔とはこれ如何に。悪魔のこの美貌に慣れる日は来るのだろうか。
(それにしても『エル』ねぇ。ブラックジョークのつもりかな?)



