トルスティ大司教は金糸で刺繍された法衣と、大司教の証である白いストラを身に付け、悠々と歩み寄ってくる。
そして玉座の前で足を止めると、陛下とエルへ恭しく挨拶した。
「神の栄光が御身を照らしますよう、国王陛下並びに王太子殿下にご挨拶申し上げます」
「うむ。汝に祝福があらんことを」
トルスティ大司教の挨拶に陛下が返事をすると、再びエルが口を開いた。
「此度汝を召喚したのは、バザロフ司教が引き起こした<穢れし者>による襲撃事件に於いて、神殿本部統括者である大司教の位を持つ汝、トルスティ大司教に責任追及を行うためである。衛兵、大罪人であるバザロフ司教をここへ」
エルがそう言うと、再び入り口の扉が開き、囚人が着る質素な服を着たバザロフ司教が拘束された状態で、衛兵に連れられて入って来た。
事件以来、久しぶりに見る司教はすっかり覇気が無く、ひどく老けこんでいた。一気に十歳は歳をとったような気がする。
バザロフ司教は目の前のトルスティ大司教に気付くと、「ひぃっ!?」と悲鳴をあげた。
まるで悪事がバレて見つかった時の子供達のようだ……って、本人は歳とったおじさんだけれど。