バザロフ司教が事件を起こしたことで、神殿本部は事後処理でてんやわんやだろう。市場の人達への賠償もしないといけないし。
そんな時に最高責任者である大司教が不在なのは運が悪かったとしか言いようがない。
「三日後、トルスティ大司教を王宮で喚問することになりましたよ」
私の質問にエルが答えてくれた。
大司教が王宮を訪れるのは、国王の戴冠式や王族の誕生など、大切な行事の時だけなのに……。大司教が喚問に応じるなんて異例中の異例ではないだろうか。
それだけ今回の一件は、アルムストレイム教にとって無視できない出来事だったのだろうけれど……。
──そうして、言いしれない不安を感じながら、私はその日を迎えたのだった。