エルが私の髪の色を好きだと言ってくれたから、もう髪色に対するコンプレックスはない。だけど、この赤い髪色はとにかく目立つ。かくれんぼに不向きな色なのだ。

 だから私はエルのお友達のように、髪の色を変える練習をすごく頑張った。エルには「いきなりその魔法は無茶ですよ」と言われたけれど。

 実際、初級をぶっ飛ばして上級魔法を取得しようとしてるのだから、エルの言い分もよく分かる。


 しかし私は執念の如き粘り強さでやり遂げた。

 ──光の波長を調節し任意の波長に固定、更に効果を髪の毛に範囲指定……。


 正直めっちゃ難しかった。そもそも波長という概念を理解するのが大変だった。

 だけどその努力が実を結び、晴れて茶色の髪の毛になった私は今、堂々と王都の市場を満喫している。正直、茶色が赤に近い色だったので助かったというのもあるけれど。


「サラちゃん、あのおにくおいしそうよ」


「あ、俺もあの串焼き食べてみたい!」


「僕はあのパンみたいなのが良いな。肉と野菜が挟まれてるやつ」


「私はクレープ!」


「こらこら、さっき皆んなでご飯食べたばかりでしょ! 食べ過ぎは良くないよ!」