孤児院に帰ってきた時の、新しい服を着て喜んでいた子供達の笑顔を思い出す。
屈託なく笑う姿を見たのは何時ぶりだろう……。情けないけれど、私では子供達にあんな笑顔をさせるなんて出来なかっただろう。
「それは殊勝な心がけですね。こうして改めて貴女と子供達を見ると、お互いを思いやっているのがよく分かります。子供達が優しくて良い子達なのはきっと、貴女が慈しみながら育てているからなのでしょうね」
悪魔らしからぬ言葉に、それが悪魔が使う魅了のひとつなのだと分かっているはずなのに、思わず胸が高鳴ってしまう。でも動揺したのがバレるのは嫌だったので、話題転換も兼ねて気になる事を聞く事にした。
「改めてって、私と何処かで会った事があるの?」
勿論私に悪魔と会った記憶はない。こんな綺麗な人(悪魔だけど)を見て忘れるはずないもの。
「…………ああ、貴女は知らないでしょうね。詳しくは言えませんが、僕たちが会ったのは二日前の、花が沢山咲いている場所の近くですよ」
(二日前……花が沢山……もしかして、あの神殿跡の……?)
悪魔が言った言葉に該当する場所が思い当たった私はエリーさんの言葉を思い出す。



