──サラと子供達を離宮に迎え入れてしばらく経った頃。


 彼女が王宮から姿を消したと報告を受けた僕は、使える人員全てを動員してサラの捜索を行った。


 だけど、サラのいた形跡は全く無く、それが逆に何者かの介入で、巧妙に仕組まれた誘拐なのではないかと思い至る。


 サラを心配して泣く子供達を見た部下や使用人達が、犯人達に激しい怒りを募らせていく。

 すっかり子供達に絆され、可愛がる様になった者達を、誘拐犯は完璧に敵に回した様だ。


 王宮から出た様子が無いのに、姿を消したサラの手掛かりが見付からず、困っている僕のもとへ、神殿本部に潜入中のヴィクトルから通信用の魔導具に連絡が入る。


 それは、サラが神殿本部に連れ去られ、司教達が彼女を正式な巫女にするために叙階しようとしている、という報告だった。


 どうやら神殿側が僕の弱点であるサラの存在に気付き、取り込もうとしてるのだと予想する。

 そして奴らはサラの育ての親である司祭を盾に、彼女を言いなりにさせようとするに違いない──そう考え付くと同時に、身体が勝手に動き出していた。