──月明かりに照らされた庭園にある、白いガゼボに美形の王子様と二人っきり……。


 そんな物語の中にしか無いと思っていたシチュエーションが、まさか自分に起きるなんて。


(な、何か言わなければ……! え、でもどうしよう……!!)


「え、えっと、この髪の色、自分はあんまり好きじゃなかったんだよね」


 実際私は子供の頃、よく悪ガキに髪の色をからかわれていたので、ずっと自分の髪の色が好きじゃなかったのだ。

 ちなみにその悪ガキも、二年ほど前に孤児院から旅立っている。どこかで野垂れ死んでいなければいいけれど。


「……だから、エルが魔法で髪の色を変えていると知った時は、すごく羨ましかった」


 何とか言葉を絞り出したけど、変なことは言ってないよね、と思い返す。


「僕は貴女の髪色をとても綺麗だと思いますよ」


「そ、そうかな? ……あ、ありがとう。エルが褒めてくれるなら、これからは好きになれそうかも」


「貴女ならどんな髪の色でも似合いそうですけどね。でも、僕はこの髪色が貴女らしくて好きですよ」


「す、好き……?」


 ヱルの言葉に、思わず胸がドキッとする。