今開かれている祝賀会の、もう一人の主役であるエルが、こんなところに来るとは思わなかった。でっきり今頃、ご令嬢方に囲まれていると思っていたのだけれど。
「サラが広間から出ていくところが見えたので、中座してきました。僕も隣りに座っても良いですか?」
「……う、うん、どうぞ」
ベンチの真ん中に座っていた私が端っこに寄ると、エルが「失礼します」と、少し離れた場所に腰掛けた。
エルもここしばらく忙しかったのだろう、その綺麗な顔には疲労の色が滲んでいる。
「あんなに人が多かったのに、よく気が付いたね」
王宮の大広間には、千人近くの人が集まっていた。私達とヱルの距離も結構離れていたはずなのに……美形は視力まで良いのだろうか。
「貴女のその見事な赤い髪はすぐ目に付きますし……何より、僕が貴女に気付かないなんて有り得ませんから」
月明かりの中で佇む正装姿のヱルは、輝く金の髪も相まってとても神々しい。
そんなヱルが優しく微笑みながら、私に期待させるような、甘い言葉をかけるものだから、さっきまで考えていた事が頭の中でぐるぐると回りだす。



