私は失礼にならないよう、サッと部屋中を見渡して貴族達の顔を確認する。


(あ、エルの隣りに座ってるおじさん、すごく顔が赤い。高血圧かな?)


 私達が来る前にどんな話をしていたのかは分からないけれど、きっと国が抱える重要な問題に立ち向かうために頑張ってくれているのだろう。


 そう感謝したのも束の間、その名も知らぬ元老院議員のおじさんが、突然エルに向かって怒り出した。


「この崇高なる元老院会議に平民を招くなど、殿下は何をお考えか!! 神殿の件といい、殿下の行動は目に余りますぞ!!」


 おじさん議員の言い分に私はホントだな、と思う。だけど同意できるのは前半だけだ。後半の神殿の件というのは、やはり私が関係するあの件だろう。


(……という事は、あのおじさん議員が神殿派か……)


 エルに誡められたおじさん議員が、周りの議員達から宥められているのを見て、何となく勢力図が目に浮かぶ。


 私が頭の中で王族派と神殿派の議員を分別していると、エルとお爺ちゃんが会話し始めたので、慌てて思考を戻す。


「──それでシス殿、こちらへ赴かれたということは、決断されたのですね?」