ベズボロドフ公爵に、怒りを滲ませたエデルトルートの声が届く。


 これは流石に不味いと思った神殿派の議員達が、怒り狂うベズボロドフ公爵を何とか宥めすかして落ち着かせた。


「──それでシス殿、こちらへ赴かれたということは、決断されたのですね?」


「はい。殿下をお待たせしたこと、深くお詫び申し上げます。お時間をいただいたおかげで、私の迷いはなくなりました」


 エデルトルートとシス以外に、二人の会話を理解できる者はいない。シスと一緒にこの場へ来たサラという少女もまた、議員達同様、不思議そうな表情を浮かべている。


 そんな戸惑う議員達を一瞥したエデルトルートは、椅子から立ち上がると、会議室中に聞こえる声量で言った。


「王太子である私、エデルトルート・ダールクヴィスト・サロライネンは、このシュルヴェステル・ラディム・セーデルフェルトを、王国騎士団の団長に任命する!」


 突然の宣言に、エデルトルートとシスを除いた、この場にいる全員が驚いた。