最速の運搬方法だと言われている飛竜便を使えば可能だろうけど、飛竜便は貴族や王族が使うようなもので、凄くお金がかかる。そんなお金があったら服どころか人数分のベッドだってシーツだって何でも揃ってしまう。

 あの司教に限らず、清貧を尊ぶアルムストレイム教の司教がそんな事をするとは思えない。


(……じゃあ、一体誰が服を? 誰かが寄付をしてくれたのかな? それともお爺ちゃんにお世話になった人からのお礼の品……?)


 いくら考えても服を贈ってくれた人に心当たりがない。昨日の夜にこっそりと……昨日、ねぇ。


 昨日は祭壇の掃除に献花してから神殿跡を出発してひたすら山道を進んでいたっけ。

(もしかして、祭壇の掃除とお花のお礼に神様が贈ってくれたなんて……そんなわけ無いか)


 結局思い当たる人がいなかったので、しばらく様子を見てみようと言う話になり、自宅に帰るアンネさんにお世話になったお礼を伝えると、いつもの日常に戻る。


(明日からまた大変な日々を送るのか……でも、一旦は服の心配がなくなったから、しばらくは平穏に過ごせるかな)


 ──なんて、その時はのんきに思っていたけれど、その日から私の平和な日常は崩れ去ることになる。