(だけどエルは優しいから、私に負い目を感じて償おうとするんじゃないかな……。それはそれで惨めな気持ちになるから全力で遠慮したいけどさ)


「そうか、サラは身分の差が気になるんだな」


 私の話を聞いたお爺ちゃんが納得したように頷いた。


「ん? まあ、そりゃね……。身分の差はどうしようもないよ」


 平民で孤児という時点で、私はエルにとって恋愛対象じゃ無いと思う。

 それに私はエルには立派な王様になって欲しいと心から願っているのだ。その為には物理的にも精神的にもエルを支えてくれる、権力を持つ家柄の王妃様の存在が必要不可欠だろう。


 国王になったエルと、今はまだ見ぬ王妃様が手を取り合う姿を想像する度に、私の胸がズキッと痛むけれど、それはエルの事を好きだと自覚した時からずっと覚悟していた痛みだ。


「何か卑屈になってんなー。お前らしくもねぇ。そんなに身分が大切かねぇ」


 私は「いやいや、相手は王族だよ? そこは重要でしょ!」と、思わずお爺ちゃんにツッコミを入れる。


 だけどツッコんだ後ではたと気が付いた。

 ──そう言えばお爺ちゃんは自ら高貴な身分を捨てたのだ、と。