「それにサラが苦労したのはお前のせいだからな? 俺がサラを泣かせた人間を許すと思っているのか?」


 お爺ちゃんに抱きついたままの私にお爺ちゃんの顔は見えないけれど、怒気を孕んだ低い声に、周りから息を呑む気配が伝わってくる。


「……っ、どうか怒りをお収め下さい。ならばサラさんとご一緒に本国へお戻りいただくのは? そうすれば今までのお詫びも兼ねて、サラさんには最上の待遇を──」


「黙れ」


 トルスティ大司教の言葉をお爺ちゃんが切り捨てた。

 大司教はお爺ちゃんを本国へ連れて行こうと必死のようだけれど、その行為はより一層お爺ちゃんの怒りを買うことになってしまう。


「サラは本国へは行かせない──」


 お爺ちゃんはかなりお怒りのようで、心なしかお爺ちゃんを中心に大気が震えている……ような気がする。


「……っ、」


「ひっ!?」


「あ、あわ……!」


 司教達は皆んな、お爺ちゃんの威圧にも似た怒りを含んだ眼光に腰を抜かしてしまう。だけど流石というべきか、トルスティ大司教だけは持ち堪えたらしく、辛うじて立っている。