「ええーーーっ!?」


 突然五階から飛び降りたシスに面食らったヴィクトルだったが、気を取り直して急いで追いかける。


 シスが向かった先には洗礼などを行う小神殿がある。

 まだ正式な巫女でないサラが連れて行かれる場所は小神殿だと彼は知っていたのだろう。


(サラから変わり者だと聞いていたけれど……!)


 何もかもが予想外のシスであるが、人を惹きつける不思議な雰囲気を持っている、とヴィクトルは感じた。そしてとても頼もしいとも。


 だけど今の自分達は多勢に無勢で、かなり不利な状況だ。


(それでも──彼がいれば、無事にサラを救い出せる──!)


 初対面なのに、ヴィクトルは何故かシスにそんな安心感を覚えた。


 ──そうして、憧憬にも似た想いを抱きながら、ヴィクトルはシスに追いつこうと全力で駆け出したのだった。