ヴィクトルはバーバリ司教の自尊心を傷つけないように声を掛ける。
「誰もがこの王都を司教区とする司教に任命されたがっていらっしゃいますから。きっとバーバリ司教様に取って代わろうと狙っているのでしょう」
「……ううむ……そうであろうな。ワシでもこの司教区を手に入れるのに苦労したからな……羨む気持は良く分かるぞ」
ヴィクトルの言葉にバーバリ司教の機嫌は幾分か収まったようだ。ヴィクトルはそれとなくバーバリ司教から会議室で行われた話の内容を聞き出そうと考える。
バーバリ司教の言葉から、サラに関わる話だったのは間違いなさそうだ。
「巫女見習いと言えばあの時の赤い髪の少女でしょうか。何か問題でもありましたか?」
「あの巫女見習い、よりにもよって王太子の元に下りおったわ! しかも離宮で孤児達の面倒を見ていると! そのせいで王太子の評判が上がっておるのだ!」
バーバリ司教が悔しそうに顔を顰める。彼は王太子を目の敵にしていたので、王太子の評価が良くなることが許せないのだろう。