神殿の人間に案内されて神殿へと向かっていると、花が咲き乱れる花壇のそばで何やら揉めている声が聞こえて来た。
どうやら年若い巫女がバーバリ司教に何かを訴えているようだが、にべもなく断られている。
何故か気になった僕が様子を見に近づくと、仲間のヴィクトルが司教の付き人としてその場にいた事に気付く。彼とは神殿内で接触はしたくなかったけれど、そのまま放置するのも不自然だったので一声掛けることにする。
「バーバリ司教、何を揉めている?」
「──!! で、殿下……!?」
僕が声を掛けた事でバーバリ司教とその付き人達、巫女らしい少女が慌てて礼をする。
「先程言い争うような声がしたが何か問題でも? それとその少女は?」
「そ、その、この娘は巫女見習いでして、この忙しい時に相談を持ちかけて来たので、つい叱責してしまいまして……」
巫女見習いが神殿本部の、ましてや最奥の神殿にいるのは不自然だった。この神殿は正式に認められた巫女でなければ立ち入りを禁じられているはずなのだ。
ほぼ一般人と変わらない立場の彼女がそう簡単に入れる場所ではない。