エルが司祭にそう告げて踵を返す。そして私の手を取った時、その様子を見ていた司祭がエルに向かって問い掛けた。


「お、お待ち下さい! 貴方様にとってそのサラという少女は一体どのような存在なのですか! まさか大司教からの打診を──……っ!」


 だけど司祭の言葉は最後まで発することが出来なかった。振り向いたエルの冷たい視線に射抜かれ、身体が硬直したかのように動かないからだ。……どういう理屈か分からないけれど、威圧かな? まるで氷の彫像のように固まった司祭に向けてエルが吐き捨てるように言った。


「それを私がお前に話すとでも? 必要以上の発言は許していない。アルムストレイム教の威光など私には通用しないものと知れ」


 エルの言葉に司祭を始め、修道士達が恐れ慄いている。御者のおじさんなんかは遠くの方でずっとひれ伏したまま震えている。


(……エルって、何者なんだろう……? 今までの会話や司祭達の様子からして高位貴族以上の権力を持っている……となれば、やっぱり──……)


 ──ようやく辿り着いた答えに呆然とする。