修道士と揉み合っている内に、思わず口からエルの名前が溢れてしまう。
盗賊に拐われた時、エルはまるで物語のヒーローのようにタイミングよく現れて私を助けてくれた。そんな都合の良い事が何度も起こる訳が無いと分かっていても、私は必死にエルの名前を叫ぶ。
「エル! エル……っ!!」
「────サラ!!」
夜の闇を引き裂いて私の声に応えてくれたのは、いつも私を助けてくれる人の声だった。
私は逸る気持ちを抑えながらエルの姿を探すけれど、ぐるっと見渡してもエルの姿は見当たらない。
その時、月明かりに照らされた道がふっと陰ったので反射的に月を見上げると、そこには大きな翼を広げた巨大な生物──飛竜が月を背にして夜の空に浮かんでいた。
「なっ!? 何故こんなところに飛竜が!?」
「早くっ! 早く中に隠れろっ!!」
私の腕を掴んでいた修道士と、馬を宥めていた御者と私に突き飛ばされたもう一人の修道士達が慌ててその身を隠そうとする中、私は逃げる事も忘れて呆気にとられながら、その場に立ち尽くしていた。



