巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。


 ──今の私を突き動かすのは、一目だけでもエルに会いたいという衝動で。


「な……! お、お前!! 戻れ!! 戻らんか!!」


 馬車の中から司祭の叫び声が聞こえるけれど、もちろん私が言う事を聞く訳がなく。

 だけど月明かりに照らされた道を横切り、闇が広がる森の中へ入ろうという一歩手前で、私の腕がもう一人の修道士に掴まれてしまう。


「ちょ……っ! 離して!!」


「離す訳無いだろう! 大人しく馬車へ戻れ!!」


「戻る訳ないじゃない!! エルに会えず子供達も置いたままなんだから!!」


 未だに聞こえてくる馬の嘶きに御者の声、私達の言い合う声が周りに響き渡り、いつも静寂な森が騒然たる有様だ。


(くっそーっ!! あとちょっとだったのに!!)


 私は修道士の腕を振り払おうとするけれど、男の人の力に勝てる訳がなく、腕を掴んでいる手はがっちりとして外せない。


 修道士が再び馬車に連れ戻そうとするので、必死に抵抗しながら心の中でエルの名前を呼ぶ。名前を呼んだからって私に気付いてくれる保証はないけれど。


「──エル……! 助けて!!」