巫女見習いの私、悪魔に溺愛されたら何故か聖女になってしまいました。


 『闇』といえば盗賊のお頭の闇魔法や、エルの事を思い出す。

 私もつい先日『闇』絡みの経験をしたばかりだし、きっとエリーさんの話は本当の事なのだろうな、と思う。商人の勘は侮れないと言うし。


「あ! ごめんなさいね、こんな話になっちゃって。とにかくサラちゃんが心配していた神殿は無事だったし、悪魔じゃなくて恋愛の神様の神殿だったから安心してね、って伝えたかったの」


「エリーさん……! 私の為にわざわざありがとうございます!」


 こうして自分を心配してくれる人の存在をとても嬉しく思い──私はハッと気が付いた。

 エリーさんはいつも私を気遣ってくれているのに、私はエリーさんに何も返せていないのだ。


(何かエリーさんにお礼をしたいけれど……どうすれば良いんだろう? さっき作ったお菓子は子供達が食べちゃったし……)


 私がどうしようと悩んでいると、エリーさんが「そろそろお暇するわね」と言って席を立ってしまう。このままではお礼が出来ずに帰らせてしまうと焦った私の頭に、さっきまで刺していた刺繍の事が浮かび、「あ!」っと閃いた。


「エリーさん、渡したい物があるのでちょっと待っててください!」