子供達にぎゅうぎゅうと抱きつかれながらそう言うと、みんなが一斉に「はーい!」と言って笑顔になる。そんな子供達の笑顔が愛おしくてたまらない。
(いつも何気なく過ごしていた日常がこんなに幸せな事だったなんて、あの出来事がなかったら気付かなかったよ……)
司祭様がいなくなってからずっと大変で、自分一人がどん底に突き落とされたような気になっていた。けれど子供達がいつも元気でいてくれたのはとても幸せな事だったのだ。
きゃあきゃあとはしゃいで楽しそうにしている子供達を眺めながら、改めて神に感謝した私はいつもの日常に戻るべく、朝ごはんの準備に取り掛かる事にした。
* * * * * *
朝ごはんを食べている時、さり気なく昨日の事を覚えていないか探りを入れてみたけれど、子供達全員何も覚えていなかった。
(盗賊に拐われた記憶なんて無い方が良いもんね。トラウマになったら可哀想だし)
とりあえず子供達への心配事が無くなった私は、空いた時間を利用して刺繍の内職を進める事にする。できるだけ多くの品を納品して収入を得ないと……と考え、ふと昨日の出来事を思い出す。



