「で、殿下……!?」


 バーバリ司教から漏れ聞こえた言葉に、背後にいるのがこの国の王族だということを知った私は、慌てて俯いて跪く。


「先程言い争うような声がしたが何か問題でも? それとその少女は?」


「そ、その、この娘は巫女見習いでして、この忙しい時に相談を持ちかけて来たので、つい叱責してしまいまして……」


 先程の剣幕は鳴りを潜め、バーバリ司教がしおらしく殿下に説明する。


(さっきの態度とは大違いだなぁ……やっぱり王族って怖いのかな……)


 バーバリ司教を震え上がらせている殿下がどんな顔をしているか興味はあったけれど、私のような平民がそのご尊顔を拝することなど出来ないのが残念だ。


「そうか……。私が突然視察をしたいと申し出たことで、司教が忙殺されているのだな」


「……!! い、いえ!! 決してそのようなことはありません!! その娘の話は後ほどゆっくり聞きますので、殿下はどうぞこちらへ……!」


 殿下の言葉に、バーバリ司教が慌てて弁明し、殿下を何処かへ案内しに行ってしまう。私はずっと俯いたままなので音と声で判断するしか無いけれど。