完全に人の姿になったエルが私の元へ駆けつけて、私の顔を心配そうに覗き込んでくる。その顔には焦燥感が滲んでいて、無理をして私を助けに来てくれた事が窺える。
「私は平気だよ。でもエルの方が大変だったでしょ? 神殿に閉じ込められていたのに大丈夫だったの?」
私の心配してくれるのはすっごく嬉しいけれど、今は自分の事よりエルの体調が心配だ。そんな私の言葉にエルは驚いた表情を浮かべると、「どうしてそれを……」と呟いた。神殿の入り口が塞がれた事を私は知らないと思っていたのかもしれない。
久しぶりのエルと会話出来た事に私が安堵していると、お頭がエルに向かって叫んだ。
「その黒髪……いや、帝国皇太子ではないな……! ならばお前は一体何者だっ!? どうやって俺の結界を解いた!? それに<影移動>なんて超位魔法を使える者なんて、このく──……!!」
お頭がエルにいくつもの質問を投げかけるけれど、お頭は最後まで言葉を発する事が出来なかった。何故なら──……
「今、僕は彼女と話をしているんです。邪魔をしないでいただけますか」
「……ぐぅっ……!」



