──けれど、そんな燃え上がった闘争心を一瞬で掻き消す程の、冷や水を全身に浴びせられたような、心臓を掴まれているような、そんな圧迫感が部屋中に満ちる。
お頭をはじめ子分達はその凄まじい威圧にガタガタと震え慄いている。先程までの威勢が嘘みたいだ。
私も盗賊達と同じように威圧を感じているけれど、不思議と恐怖は感じない。それはきっとエルの気配と薫りに包まれているから安心しているのかもしれない。
──そうして盗賊達が恐怖に震えている時、それは顕れた。
床に黒い影のようなものが出来たかと思うと、あっという間に広がっていく。そして煙霧のようなものが立ち昇り、次第に人型を象ると、私が逢いたくて堪らなかった愛しい人の姿になった。
(エル……!! 本当にエルだ……!!)
神殿から出てこられないはずのエルが、どうして此処にいるのかは分からないけれど、それでもエルの無事な姿が見られてとても嬉しい。
「……サラっ!! 大丈夫ですか!?」



