テオに指示されたお頭はやれやれとでも言うようにため息をつくと、私の方へ視線を向ける。
私を見るお頭の目には憐憫の色が滲んでいて──まさか盗賊に同情される日が来るとは思わなかった。それほど今から使う闇魔法は酷いものなのだろうか。
お頭は倒れていた私の身体を起こし、壁により掛かるように座らせると「可哀想だが契約だからな。まあ、しばらく頭痛がするだろうが堪えてくれ」と、憐れむような顔をして言った。
私はそんなお頭を見て、憐れむのならちょっと魔法を弱めにしてくれないかな……なんて、ぼんやりと考える。
(こういう時、颯爽とヒーローが助けに来る場面なんだけど……エルは神殿から出られないだろうし)
物語のように都合よく助けが来る事を少し期待してしまった自分に失笑してしまう。私はいつの間にか人に頼る事を覚えてしまったらしい。
(人に頼らず生きていけるようになれ、とお爺ちゃんに言われていたのに……)
お頭が魔力を集めて魔法行使の準備に入る。段々大きくなる魔力の渦に、お頭がかなり高位の魔法使いなのだと分かる。



