純粋に私に好かれたかったらしいけど、今となってはそれは無理だと判断したのだろう。自分を取り繕うのをやめたテオは、計画は狂うし、私が靡かないから闇魔法に頼る事になったし……とブツブツ文句を言っている。
でもテオの言葉で違和感の正体がやっと分かった。子供達を拐われた私が街の憲兵団に通報しないように闇魔法で記憶の改竄でもするつもりだったのだろう。
今こうして話している内容も、都合が悪い箇所は闇魔法で記憶から消すつもりなのかもしれない。
──そうして精神干渉を受けた私は子供達の事を忘れ、テオを好きになるのだろう。そしてそのまま結婚させられるのかもしれない……そこには偽りの愛しか無いけれど。
(ここまでテオを追い込んでしまっていたなんて……)
こうなってしまったのはテオのせいだけでなく自分にも責任があるんだろうな、と思う。でも昔ならともかく、今の私はエルが好きなのだ。だからこの先テオを好きになる事はないだろう……テオには申し訳ないけれど、こればっかりは仕方がない。
「じゃあお頭、サラに魔法をかけてくれ。ガキ共の事は忘れて俺だけを好きになるように、簡単に解けない強力な奴を頼む」



