ちなみにエルが言っていた「街へは行くな」という約束はちゃんと守っている。エルは一週間ぐらいと言っていたけれど、エルが来なくなった日からずっと私は街へ行っていない。

 エルが贈ってくれた物資のおかげもあり、今のところ不自由なく暮らせているから、街へ行く用事が刺繍の納品以外無いのは助かる。街へ行こうと思うと、往復で結構時間がかかるし、婦人会のおばさま方にもお願いしないといけないし。


 お昼が過ぎ、子供達が昼寝をして一息付いた頃、玄関の扉をノックする音が響く。


(あれ? 誰だろう? 今日はおばさま方が来る日じゃないよね……)


 来客予定は無い筈だけどな、と思いながら「はーい! どなたですか?」とドアの向こうにいる人物に問いかけると、意外な返事が返って来て驚いた。


「サラちゃん久しぶり! エリーだけど、覚えているかしら?」


「エリーさん!?」


 まさかエリーさんが孤児院に来てくれるなんてびっくりした。思わぬ来客に凄く嬉しくなる。


 私が慌ててドアを開けると、以前と変わらない優しい微笑みを浮かべているエリーさんが立っていた。