小さな街の、小さな神殿にある、小さな孤児院で、私は巫女見習いとして働きながら子供達と生活をしている。

 私のサラと言う名前は、祭司だった育ての親であるお爺ちゃんが名付けてくれたそうだ。

 私は赤ちゃんの時にこの孤児院に引き取られたので、両親の顔は憶えていない。


 そんな私の身元を知る手掛かりは唯一つ──私の胸にある小さな痣だけだ。

 両親に関する記録も品も残っていないので、私が何処の出身なのか、どうして孤児院に預けられたのかも、司祭だったお爺ちゃんしか知らないのだ。


 そして、そのお爺ちゃんは一年前、高齢のため司祭を退任し、今は引退司祭様用の施設で過ごしているらしい。らしいというのは、司祭の地位を返上しにアルムストレイム教の神殿本部に行ったっきり戻ってこないので、近況が分からないからだ。

 お爺ちゃんはすぐ戻ってくると言っていたけれど、何か問題でもあったのか、しばらく王都にある神殿本部に滞在することになってしまったという手紙が随分前に来たっきり音沙汰がない。