さて、シェリーのいなくなった実家ではひたひたと崩壊の足音が近づいてきていた。
 シェリーは9歳で呪いを植えられた身となり、実家であるグローヴ侯爵家で虐げられてきた。
 そんなシェリーのことを唯一見守り、優しく接していたのは兄のブライアンだった。
 彼はシェリーがご飯をまともに与えられないのを見て、こっそりとキッチンから食事を取ってきて分け与えたり、洋服の差し入れなどをしていた。
 そんな彼がなんと病に伏せってしまったのだ。

 当然後継ぎである彼の病は両親を悩ませ、そして特に溺愛していた母親の精神を蝕んだ。
 母親であるベラは毎日酒に溺れるようになり、社交界など表舞台からも姿を消した。

「くそっ! どうしてブライアンが……」
「ブライアン……」

 ベラはもうブライアンが眠っている部屋から出ずにつききりで眺めていた。
 ただ、彼女自身が看病をするわけではなくベラはひたすら酒を煽って現実から逃げている。
 その横でブライアンの容体について医師に確認するグローヴ侯爵。

「もってあと2年かと思われます。ただ、かなり危険な状態です」
「なんで……」

 グローヴ侯爵は苛立ちながら近くに合ったテーブルを拳で殴りつけると、その足で去っていった。
 もはや妻であるベラのことなど見てもいなかった。