すると、セドリックがドアをノックした後、書類を手に山ほど抱えて執務室に入ってきた。

「陛下、今そこでシェリー様とすれ違いました」
「ああ」
「……ローラ様のことですか」
「彼女の写真を見られた。うっかりしていた」

 セドリックは控えめにため息を吐いた後、書類をジェラルドのいるコーヒーブラウンの机に置いた。
 そして主人のほうに身体を向けて語り始める。

「また死なせるのですか?」
「え?」
「ローラ様は確かに陛下を想って、そして力尽きてなくなりました。ですが、シェリー様はまだ生きています。まだ間に合う」
「──っ!!」

 その言葉にジェラルドは目を見開き、そして少しの間考えたあとセドリックを見つめた。
 覚悟の宿った目を見てセドリックは書類に目を通しながら言う。

「スコット伯爵との会議は1時間後です。それまでには戻ってください」
「ああっ! 必ず戻る!」

 ジェラルドはセドリックの横を通り過ぎて部屋を飛び出していった。



 廊下を走ってシェリーの元へと向かいながら彼女との言葉を思い出す。


『私はまわりを不幸にしてしまうんです』

『あなた様の婚約者になれて嬉しいです』

『ジェラルド様が初めてです』